2013年4月1日月曜日

深江文化村をまもる

久々のブログ更新となりました。

先日、
深江文化村の方からメールをいただきました。
大正末期に建てられた、今も残る文化村の近代建築2棟のうちの1つ、
「古澤家住宅の目の前に、6階建てのマンションが計画されている」という内容でした。

当時、日本とロシアの架け橋であった
歴史的・文化的な遺産の周辺環境が、
こころない開発のもとに侵害されようとしているのに対し、
隣家住人の方々もひどく心を傷めておられるようす。

なんとか、すこしでも長く大きく昔ながらの深江文化村の姿を
とどめてもらいたいものです。

「深江文化村を大切に思ってくださる方々、お一人でも多くの方々にこの現状を知っていただきたい」とのことでしたので、『阪神間モダニズム 近代建築さんぽ』で紹介しきれなかった古澤家住宅の取材記事を交え、本書籍掲載内容の文化村についての内容を以下に紹介したいと思います。


古澤家住宅建築概要
 設計者……L.N.ラジンスキー
構造……木造2階建て
敷地面積……平米
延床面積……200平米
竣工……大正14
文化財指定……国登録有形文化財

富永家住宅建築概要
 設計者……L.R.ベイリー
 構造……木造2階建て
敷地面積……平米
延床面積……平米
建築面積……25
竣工……大正14(1925)
文化財指定……国登録有形文化財

深江文化村(2011年取材・執筆内容から)
阪神芦屋駅を降り、深江文化村を目指す。
かつて3000坪近い敷地に400坪ほどの芝生の中庭を造り、その周りに十三棟の洋館が立ち並んでいたという。今では「富永家住宅」と「古澤家住宅」の二棟が残る。芦屋文化村とも呼ばれた。
芦屋駅から芦屋川の川沿い西側を南に下っていく。川原をのんびり歩くのが心地よいかもしれない。途中、500メートルほど下ったところに、大正時代に建てられた旧安部邸、現在サンアール不動産芦屋寮の建物が見られる。設計者の松井貫太郎は日本工業倶楽部会館などを手がけた著名建築家。天然スレート葺きの屋根から突き出したドーマーと2本の煙突が印象的で、アシンメトリックな構造や石張りの外壁などにも重厚感が感じられる。残念ながら、塀の外から窺う程度にしか見られないが、川沿いの信号を目印に、西側に回ればなんとかお目にかかれる。
旧安倍邸から南西、直線距離にして200メートルほどのところに深江文化村はある。道路は路地風で多少入り組んでいる。文化村の北角にたつ案内板によると「大正から昭和かけて、この辺り一帯には、ピアニストのアレクサンダー・ルーチン、指揮者のジョセフ・ラスカやエマヌエル・メッテルら、ロシア革命(1917)の亡命者たちが居住していた。彼らを慕って多くの門下生が集まり、音楽を通した交流からは、朝比奈隆、服部良一、貴志康一、大澤壽人ら多くの日本人音楽家が生まれた。この地域が深江文化村と呼ばれる由縁である。・・・・ヴオーリズの弟子で、建築家の吉村清太郎によってデザインされた。・・・」とある。

当時神戸には亡命者がたくさん滞在していた。音楽家だけでなく、服地や製菓、料理の能力を生かして神戸に定着した人々も少なくない。かのトルストイの娘、アレクサンドラもアメリカへの亡命前の半年を芦屋の海岸地帯で過ごしたという。

古澤家住宅の前に立つ。複雑に組み合わされた急勾配のスレート屋根、これでもかというほどに壁に切られた大小の窓数。ロシア人建築家の設計によるものだが、内部には和室も設けられているという。急勾配の切妻屋根などはロシア的な発想なのかもしれない。私邸なので、もちろん、外から眺めるだけ。

富永家住宅は、木造ツーバイフォーによる寄せ棟2階建て。深いみどり色と軒下や窓枠の白とのコントラストが美しい。建築主の富永初造氏は鈴木商店(現在の神戸製鋼・帝人・サッポロビールなどがその流れをくんでいる)の木材関係の海外勤務員で、この住宅の資材や家具一式を米国から搬入したという。良質な資材が、くたびれることなく維持されている。




2011年12月16日金曜日

深江文化村

阪神間モダニズム 近代建築さんぽ

深江文化村は阪神芦屋駅から徒歩15分ほどのところにある。
大正末に中庭を囲んで13棟の洋館が建てられたというが、
今では「冨永家住宅」「古澤家住宅」の2件のみが残る。

ここが文化村といわれた由縁は、
ロシア革命をのがれた亡命者たちが、
このあたりに居住し、
なかにピアニストや指揮者など文化人が多く、
彼らを慕って集まった日本人門下生がやがて
著名な音楽家にもなっていたことなどからである。
「芦屋文化村」とも呼ばれていたらしい。
ゴンチャロフ製菓やモロゾフなどは
この時代の亡命者が設立した会社である。

冨永家は、木造ツーバイフォーの2階建て。
古澤家は、急勾配のスレート切妻屋根が特徴的。
どちらもきれいに保存されているが、個人宅なので、
見学するには、
遠くから静かに見守る程度にしてほしい。

文化村から
すこし南西に太田酒造迎賓館がある。
旧小寺源吾別邸である。
スパニッシュ風。
ヴォーリズの設計と言われている。

文化村の紹介看板が立ててある

古澤家。書籍の取材資料用にとったもの。



冨永家。裏庭側からのショット。


太田酒造迎賓館。塀越しに垣間みる。



詳しくは
ブログ右手にあるリンクから。
(ついでに小説も見てください。直木賞クラスのものが無料で見られます)

書籍「阪神間モダニズム 近代建築さんぽ」の購入は、
書店または版元(神戸新聞総合出版センター)やアマゾン等のネット販売をどうぞ。

2011年12月9日金曜日

大庄公民館

阪神間モダニズム 近代建築さんぽ

村野藤吾という日本を代表する建築家により
大庄村役場として建てられた建物は、
その奇抜さと、外壁に配されたレリーフが際だつ。

建物は村野の若かりしころの作品、
当時の公共建築物の権威的なプランに
大きな一石を投げかけた秀作。
専門家にとても評価が高い。

村役場だけに規模は大きくはなく、
建物に興味がない人にとっての、
散策目的としてはすこし物足りないかも知れない。

それでも、
ギリシャ神話の「グリフィン」、
オリーブをくわえたハトなどのレリーフは、見物。

建築、造型に惹かれはじめた頃に
訪れると、その味わいが理解できるのではと思う。

外観南面。塔屋にもレリーフ

奇抜なデザインがみてとれる

グリフィン。鷲の頭に獅子の胴

オリーブをくわえたハト


貴賓室。オーク材や電燈、天井の模様も美しい

階段・踊り場

入口ホールには建物を紹介する資料がいろいろ飾ってあった


詳しくは
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2011年11月29日火曜日

兵庫県公館

阪神間モダニズム 近代建築さんぽ

兵庫県公館は明治35年に兵庫県の本庁舎として建てられた建物。
戦災などで大半が焼失したようだが、
ドーム屋根など、竣工当時のままに再現されている。

フランス・ルネッサンスの伝統が生かされ、
この時代の建物を代表するが、
それ以上に、日本の西洋建築の結実とも表現される。

内部は近年改修されているが、
迎賓部などはルネッサンスを彷彿させてくれる。

現在、迎賓館、県政資料館として利用されている。
迎賓館は土曜日、資料館は月〜土曜日公開されている。








迎賓館が美しいが、私のカメラには収めていなかった。
書籍にはカメラマンが撮った写真が載っているので、ご覧あれ。

詳しくは


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2011年11月18日金曜日

御影公会堂

阪神間モダニズム 近代建築さんぽ

阪神石屋川駅の北、国道2号線沿いに御影公会堂はある。
JR六甲道駅や阪急御影駅などからだと、
10〜20分ほどの、さんぽがてらで行けるかと思う。

近代建築の一時代を築いた清水栄二設計の建物は、
円形のテラスをもち、客船デッキのようにも見える。
ドイツ表現主義の影響を受けながらも、
個性のあるアレンジを加え、
特徴深い、独特の建物として昭和初期の建築当時の姿をみせる。

空襲で被災した建物は、
野坂昭如の「火垂るの墓」の1シーンにも登場する。

地下の食堂は、
「美味しい」と評判で,
食事や喫茶をしながら、
構造や内装が楽しめる。

本書・本ブログで紹介している甲南漬資料館
とともに訪れてみてほしい。


国道2号にかかる石屋川橋から望む


ファサード部

荘重な玄関

裏手から見た姿

エントランス内部

上階

階段付近

地下の食堂。ウィークディはランチのみ。
土・日・祝はディナーも。

食堂にかかる時計。
なんともモダンな雰囲気。


詳しくは


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書店または版元(神戸新聞総合出版センター)やアマゾン等のネット販売をどうぞ。

2011年11月12日土曜日

六甲山ホテル旧館

阪神間モダニズム 近代建築さんぽ

昭和初期、都市近郊高級リゾートホテルとして建築されたホテル。
いまでも、その姿は旧館として残る。

木を基調にしたハーフティンバー山小屋風の建物は、
ハイカラと呼ぶにふさわしく、
往時の姿で迎えてくれる。

内部は連続アーチの壁や、
スクラッチタイルで造り込まれ、
心地よい圧迫感も感じられる。

ホテル直通のバス便もあるが、
六甲ケーブルを利用して、
ハイキングを楽しむのもよい。


館内に飾ってあった創業当時の写真。

今もかわらぬ姿がある。

旧ロビーも味わいがある。

暖炉も荘重

季節にはアジサイも美しい

六甲ケーブル山上駅。このアールデコ調の建物も昭和初期建設。

詳しくは
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2011年11月4日金曜日

甲南漬資料館旧高嶋家

阪神間モダニズム 近代建築さんぽ

高嶋家住宅は昭和初期の建築時には
和館と洋館の2つがあったが、
今は洋館のみが残り、
甲南漬資料館として開放されている。

当時、独特の表現力で知られた
清水栄二の設計で、
国の登録文化財にも指定されている。

内部は、昭和の香り漂う
商用品が展示されており、
喫茶室など、おおいに時代が感じられる。

隣には甲南漬本舗がある。
バスが横付けされ、
観光客らしき人々も訪れるようす。

ここは、灘五郷のひとつ御影郷にあり、
南東に向えば、
富久娘、白鶴、沢の鶴などの
清酒工場が立ち並ぶ。

さんぽするのもいいかもしれない。









詳しくは
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